2017年1月14日(土)、戸畑共立病院にて第1回メディカルラリーを開催いたしました。メディカルラリーとは、医師、看護師、救急救命士等でチームを組み、いくつかのシナリオの中で、制限時間内に模擬傷病者にチーム対応を行う、救急処置の実技コンテストです。
当院でもこれまで一次救命処置やICLSなどの講習会を行ってきました。しかし、学んだことを現場で活かせないことも多いことから、シミュレーションのなかで再学習することを目的として、院内メディカルラリーを企画しました。今回は、第1回目でありながら、チャレンジャー4チーム16名、ボランティア88名と非常に多くの方にお集まり頂き、院内での救急対応を想定し、4種類のステージを作り開催致しました。
CT室ステージでは、内視鏡検査後、過鎮静で倒れている患者に対し、情報収集から搬送先を決定するまでの流れを想定しました。更にその直後、CT室で心肺停止が起こった場合の対応で、造影剤によるアナフィラキシーショックと診断し、迅速に処置・搬送できるかというシナリオでした。
同時に発生した事象に対し、急変に対する判断力だけでなく、患者背景、いつから様子がおかしかったのかなど、急変するまでの“兆候を探る”ことができるかで、採点に差が出たようでした。
外来多数傷病者ステージは、ここ数年来の予期せずおこった自然災害(Ⅿ8クラスの地震発生後)で、次々に傷病者が来院し外来が混乱するという、壮大なシナリオをボランティアスタッフ総勢40名で作りました。理屈では、トリアージから診療の流れですが、状況把握や診療スペースの確保なども重要となり、患者を適所に動かさなければ患者が溢れる状況になってしまいました。
怒号が飛び交う中、冷静かつ的確な指示を出し、現場を統制出来るかが評価の明暗を分けました。
病棟ステージでは、患者の急変に対し、人と物の手配および適切なICLSが行えるか、また同時に患者家族が不安で倒れた場合、的確に対処できるかというシナリオでした。
ハリーコール発生後、応援要員で病室が溢れ、混乱する状況の中、コマンダーを宣言し、指示および役割分担を行い、また接遇として患者家族の不安に対して、どれだけ寄り添えるかが評価の分かれ目となりました。
クイズステージでは、本番までにたくさんの知識を詰め込み、尚且つ、極度の緊張状態にあるチャレンジャーに対し、アイスブレークする意味合いで企画しました。
救急や災害に関連するキーワードをクイズ形式で出題し、制限時間内に頭と体を使って、解答して頂きました。知識の差はありませんでしたが、表現力・発想力・瞬発力に差がありました。
ボランティアの方達は、傷病者にはムラージュを施し、地震速報を流し、余震発生時に傷病者が騒ぐなど、できるだけリアルな演出を心掛けました。最初は恥ずかしがっていたスタッフも、練習を重ね感情移入できるまでに成長しました。演技でチャレンジャーを圧倒した方、演技に熱が入ったあまりに、本当に涙を流した方など皆さんの役者魂を見ることができました。今回、特に素晴らしい演技をして頂いたボランティアスタッフに優秀演技賞が贈られました。
競技会としては、何れのチームも僅差でしたが、今回、参加したチャレンジャー16名は、院内の模範となるにふさわしい動きを見せてくれました。
今回の優勝者はSky Blue。研修医と当院RRT所属のICU看護師、理学療法士のチームでした。事前練習を重ね、プレッシャーを跳ね除け、自慢のチームワークで、勝利を掴むことが出来ました。鮮やかなブルーを纏い、目の前の患者を“救わねば”という熱い気持ちが前面に表れていたことも勝因の一つかもしれません。優勝したときの表情もユニホームと同様、とても晴れやかでした。
チャレンジャー・ボランティア共に、練習の過程で知識、技術を身に付け、多職種と顔の見える関係を築き、チームワークを育むことができたと思います。これが今後、当院の急変時対応および災害発生時対応の質を支えていくのだと感じました。そして100名以上の方が集まってイベント開催でき、共愛会職員の一体感を感じることができたこと、開催後に皆が笑顔で「楽しかった」「また参加したい」「興味がわいた」などの声が聞けたことなどが収穫でした。
半年間の準備期間を経て、一つの催しに皆で一致団結して臨み、日々スタッフの意識が変化していったことを非常に嬉しく思います。シナリオから運営全般、至らない点もあったと思いますが、皆様のご協力のおかげで無事メディカルラリーを開催することができました。参加して頂いた方や裏で支えて頂いた方、全ての方々に、この場を借りてお礼申し上げます。アンケートで皆様から頂いたご意見を参考に、法人全体の救急対応・災害対応の質の向上のため、今後に繋げていきたいと思います。ご参加頂き、誠にありがとうございました。
臨床工学科 灘吉進也