腹部大動脈瘤

腹部大動脈瘤は大動脈の動脈硬化による炎症で、動脈壁が弱くなり、大動脈の径が大きくなってコブ状になったものです。日本人では直径が5cm以上で破裂の危険性が急激に高くなります。高血圧や高脂血症のある患者さんがなり易い病気です。
症状はほとんど無く、大きくなると患者さん自身でお腹の動脈性拍動を触知して、気付かれることがあります。しかし、今の日本では、健診などで時々病院を受診されている方は腹部C T検査ですぐに発見されます。発見されたら、瘤が小さくても1年に1回はC T検査をおこなって大きさの変化を観察することが重要です。5cmを超えたら治療を受けましょう。

腹部大動脈瘤の治療には以下のものがあります。
①腹部大動脈瘤が小さい患者さん   降圧剤などの内服治療
②5cm以上の腹部大動脈瘤ではステントグラフトでの治療、または開腹(腹部の正中部を縦に切開)での人工血管置換手術

✔︎ステントグラフトでの治療
両側の大腿動脈(足のつけ根)の小さな傷から動脈内にバネ付き人工血管を挿入して、動脈内で膨らませて、固定する方法です。患者さんへの負担は大変少なく、1週間前後で退院になります。成功率は約90%ですが、腹部大動脈瘤の形によってはできない患者さんもあります。

ステント前
ステント後

✔︎開腹での人工血管置換手術
多くはステントグラフトでの治療が困難な患者さんに対して、腹部の正中部を約20cm
切開して、大動脈を人工血管に入れ換える手術です。成功率はステントグラフトより高く、98%ですが、術後の腹部手術創の痛みなど、患者さんへの負担が大きくなります。

腹部切開
手術前
手術後