消化管外科 胃がん・食道がん

胃がんについて

胃がんはかつて日本人のがん死亡率の1位でしたが、近年はピロリ菌の除菌などで減少しています。しかし、以前は少なかった食道胃接合部がんなどの増加等で、ある一定数は認めている状況です。胃がんに対する術式としては、がんの占拠部位により胃全摘術、幽門側胃切除術、幽門保存胃切除術、噴門側胃切除術などがあります。
近年増加している食道胃接合部癌に対しては、従来の胃全摘術ではなく、積極的に噴門側胃切除術を採用し、胃の一部を残すだけでなく、逆流性食道炎予防の処置を施すことで術後の生活の質を改善する治療を目指しています。

「国立がん研究センターがん情報サービス」より引用

当科では、以前より胃癌の手術において腹腔鏡手術を90%以上の患者様に行っており、傷や痛みの少ない手術を積極的に行ってきました。
さらに当院では、2024年12月より内視鏡手術支援ロボット“ダビンチ”による最新の胃がん手術治療を開始しました。

ロボット支援手術の特徴には、次のようなものがあります。
① 3D画像で見えるハイビジョンカメラ
② 自由自在に手のような操作が可能な多関節鉗子
③ 手ブレ補正機能
これらの特徴により、手術の合併症を軽減し、患者様の負担を減らすことが期待されています。

当科では腹腔鏡手術の適応のある患者様に対しましては、原則的にロボット支援手術での手術を適応しております。できるだけ早期のロボット支援手術を計画させていただきますので、ご相談ください。

また、大きなリンパ節転移などの進行が見られる胃癌や切除不能と診断された胃癌に対しては、当院の「がん治療センター」の特徴である温熱化学療法を施行した後に手術を行うことにより、根治手術を目指しております。

術後のスケジュール
手術当日 手術後は、排尿用の管、点滴の管、体内に溜まった水分や血液を排出する管が入ります。
手術後1〜2日目 お水が飲めます。リハビリを開始し、排尿用の管を抜きます。
手術後2〜3日目 食事が開始されます。問題なければお腹の管を抜きます。
手術後4〜5日目 食事の量を徐々に上げていきます。
手術後7日目以降 退院

食道がんについて

食道がんは、咽頭と胃を繋ぐ食道にできるがんであり、喫煙や飲酒が相乗的に作用してリスクが高くなると言われています。食道は頸部・胸部・腹部にまたがった臓器であり、その3領域にリンパ節転移を認めやすいため、手術は3領域のリンパ節郭清を伴った食道切除術が必要となります。
食道切除後は、胃を細長く食道のように伸ばし、食事の通り道を作ります。

「国立がん研究センターがん情報サービス」より引用

以前は胸を大きく開く開胸手術が必要な疾患でしたが、現在は胸腔鏡手術と腹腔鏡手術を組み合わせた傷の小さな手術を行うことにより、術後の痛みや回復が早くなっています。
食道がんに対する治療は、手術療法・薬物療法・放射線療法と多岐にわたるため、当院での薬物療法・放射線療法を担当している「がん治療センター」と協議し、できるだけ侵襲を小さくした治療法で、患者様の早期回復を目指しています。

また、食道がんは呼吸器合併症により重篤になりやすいため、術前からの禁煙指導、歯科医師による口腔ケア、栄養士による栄養状態チェック、リハビリ技師による早期リハビリ開始などを当院では積極的に役割分担し、それぞれが連携することにより、入院中や退院後も術前の日常生活に戻れるよう活動しています。