もの忘れと認知症の違い
1. 加齢に伴うもの忘れと病的な物忘れの違いはどこですか?
2. 認知症とは、どのような状態なのでしょうか?
3. 認知症が疑われる初期症状はどのようなものですか?
4. なぜ早期発見が大事なのでしょうか?
5. 主な認知症には、どのような種類がありますか?
6. 認知症の症状はどのようなものですか?
7. 治る認知症もあるのですか?
1.加齢に伴うもの忘れと病的な物忘れの違いはどこですか?
加齢による物忘れ
*体験したことの一部を忘れる
(食べたおかずの内容を忘れる)
*ヒントを与えると思い出せる
*時間や場所などの見当はつく
*物忘れに対して自覚がある
*日常生活に支障はない
認知症による物忘れ
*体験全体をそっくり忘れる
(食べたこと自体を忘れる)
*ヒントを与えても思い出せない
*時間や場所の見当がつかない
*物忘れに対して自覚がない
*日常生活に支障がある
2.認知症とは、どのような状態なのでしょうか?
生後いったん正常に発達した、種々の機能(記憶力、時間や場所の認識力、道具を理解し使うなど)が、慢性的に減退消失することで日常生活、社会生活を営めない状態。
3.認知症が疑われる初期症状はどのようなものですか?
*同じことを何度も言ったり聞いたりする
*財布を盗まれたという
*だらしなくなった:身だしなみ、整理整頓ができない
*置き忘れやしまい忘れが目立つ
*物の名前が出なくなった(あれ、それ…)
*性格の変化:怒りっぽい、疑い深い、多幸的
*時間の感覚が不確かになった
*蛇口やガス栓の締め忘れが目立つ
*日課をしなくなった
*関心や興味がなくなってきた
*診察日を間違う、忘れている
*複雑なドラマの筋が理解できない
*慣れているところで道に迷った
*よく転ぶ
4.なぜ早期発見が大事なのでしょうか?
*早期対応が可能になり、重症化を防げる
*特にアルツハイマー型認知症では薬物治療を開始できる
*自己決定権を尊重できる
*介護に余裕を持つことができる
*軽度なうちに、生活環境、リズムを整え、それに馴染む余裕を持てる
5.認知症にはどんな種類がありますか?
老年期の3大認知症
✔︎アルツハイマー型認知症
最も多く、60~70%を占める。脳内にアミロイド・ベータタンパクが沈着し、神経細胞死を引き起こすため、脳が正常に働かなくなる。徐々に発症し進行する。
✔︎レビー小体型認知症
アルツハイマー型認知症に次いで多く、15~20%を占める。
レビー小体といわれる異常タンパクが脳内に出現する。幻視とパーキンソン症状(手の震え、すり足歩行)が特徴で初期にはもの忘れは目立たないことも多い。
✔︎脳血管性認知症
約15% 脳の血管障害で起きる脳梗塞や脳出血に関連して発症する。
認知症ではないがその前段階ともいうべき症状があります
早期発見という意味では、大事な症候です。年間10%程度が認知症に移行します。
✔︎軽度認知機能障害(MCI)
*記憶力低下(もの忘れ)を自覚している
*年齢に比べ記憶力が低下している
*家族や他人も記憶力低下を認めている
*日常生活には支障はない
*全般的な認知機能は正常
*認知症ではない(正常加齢と認知手の境界)
6.認知症の症状はどのようなものですか
中核症状といわれる神経細胞の変性に由来するものと行動心理学的症候(BPSD)に分けられます。
中核症状
✔︎短期的記憶障害
つい最近のことを記憶することができない。
置き忘れ、しまい忘れ、ごはんを食べていないという、何度も同じことを言う
✔︎見当識障害
時間:今日がいつなのかわからない
場所:ここがどこなのかわからない
人:夫、妻、子供、孫、兄妹などがわからない
✔︎実行機能障害
料理の段取りができない
電話や洗濯機などが使えない
衣服をきちんと着ることができない
行動心理学的症候(BPSD)
✔︎心理症状
妄想:物盗られ妄想、被害妄想、嫉妬妄想
幻覚:幻視、幻聴
誤認:ここは自分の家でない、配偶者は偽物
感情面の障害:抑うつ、不安、焦燥、興奮
睡眠障害:不眠、レム睡眠、行動異常
✔︎行動症状
攻撃性:暴行、暴言
拒絶
活動障害:徘徊、常同行動、無目的な行動
逸脱行動、性的脱抑制
叫声
食行動異常:異食、過食、拒食
7.治る認知症はあるのですか
もの忘れ症状があっても、その発症原因がいわゆる認知症とは異なり、手術などによって治るものもあります。脳MRI検査などで発見することができます。
✔︎正常圧水頭症
脳脊髄液の循環不善意よる歩行障害、もの忘れ、失禁が3大徴候
✔︎慢性硬膜下血腫
転倒などで頭部打撲後、徐々に血腫が大きくなって脳を圧迫し2〜4週間後に、意識障害、人格変化、もの忘れ、運動麻痺などが出現する。
認知症は加齢に伴う病気、誰でもなりうる病気です。
認知症の人は赤ちゃんに帰ったのでもなく、頭がおかしくなったのでもなく単に障害(短期記憶障害、見当識障害など)を抱えてしまったのです。
決して子ども扱いや変人扱いすべきではありません。周囲の理解や対応によっては悪化する要因ともなりうるので、一人の人間として尊厳をもって接することが大切です。