取り扱う主な疾患
尿所見異常
一次検診で要精査となった尿所見異常症例を主に取り扱っています。一次検診の検査項目は尿蛋白・尿潜血の定性検査であり、これは慢性糸球体腎炎の早期発見を目的としたスクリーニング検査です。
腎炎に特徴的な所見「腎炎の三徴」は、尿蛋白・尿潜血・円柱(腎炎に比較的特徴的な蛋白の一種)であり、当科では二次検査として、先ずは、尿蛋白の定量・尿沈漬上の赤血球のサイズや形状・各種円柱の有無などの確認を行い、必要に応じて、様々な画像検査を追加施行しています。その上で、腎炎に罹患している可能性が高いと判断した場合には腎生検検査を施行しています。
腎生検検査とは腎の組織学的検査であり、入院の上で施行しています。単に腎炎と言っても種々のタイプがあり、腎生検検査により各種腎炎の疾患名や病期が判明すれば、治療方法や将来的な予後の判定を確定することが可能です。
慢性糸球体腎炎・ネフローゼ症候群
腎生検検査の結果、腎炎の疾患名が判明し、治療(ステロイド剤・免疫抑制剤の投与など)を施した症例を含め、将来的に長期の観察が必要と判断された症例は、当科外来で定期的にフォローさせていただくことがあります。
また腎炎の種類によっては、ネフローゼ症候群(多量の尿蛋白の漏出により血清蛋白濃度が低下し、全身の浮腫や胸腹水が出現する病態です)を呈するケースもあり、その治療も行っています。現行では、糖尿病性腎症からのネフローゼ症候群の頻度が多く、長期の入院加療を要する場合もあります。
慢性腎不全・急性腎不全
慢性腎不全の保存期(透析療法を開始するまでの期間)の症例を当科外来で定期的にフォローしています。慢性腎不全保存期の治療の柱は、内服療法と生活・食事指導のふたつであり、栄養士などと協力して集学的治療を行っています。一日でも長く保存期を延長することができるように努めていますが、残念ながら、保存的治療に抵抗して透析治療を開始せざるを得なくなる方もおられます。
その場合には、透析内シャントの作成・透析カテーテルの挿入などの準備を行った上で、透析療法を開始しています。当透析センターでは、血液透析・オンライン血液濾過透析が施行可能です(腹膜透析は取り扱っておりません)。透析導入期には、できる限り患者さんの精神的・身体的負担が軽減できるように心がけています。
また当透析センターの特徴として、透析治療を開始して維持期に移行した後も、そのまま当院の外来通院で維持透析を継続していただけます。また経過の中で合併症を発症した場合にも、ほとんどの疾患は院内の各診療科で対応可能です。
また急性腎不全の発症に対しても対応しています。急性腎不全は、慢性腎不全とは異なり、原疾患や治療によっては腎機能が改善する可能性があります。一時的に透析療法を必要とする症例でも、適応であれば腎生検検査を含む原因精査を行い、透析療法から離脱できるように最大限の努力をいたします。
顆粒球除去療法(GCAP)
当院の消化器内科は、積極的に炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病など)の治療に取り組んでいます。特に疾患活動性の高い一部症例に対しては、当透析センターにてGCAP 療法を施行する場合があります。GCAP療法とは、炎症性腸疾患に悪さをする顆粒球(白血球の一部)を、体外循環で吸着除去しようというものであり、通常、週2回・計10回で行われます。
従来の標準療法での治療時間は「1回1時間」ですが、当院での試みとして、同意の得られた患者さんに対して「1回3時間」でのGCAP療法を推奨しています。現在、症例数を重ねながらその有用性を検証しようとしています。ちなみに、2022年の実績では、当院におけるGCAP療法の延べ施行回数は100件/年を超え、九州管内では最多の施設となりました。