肝臓がん
成人の肝臓にできる悪性腫瘍は、原発性肝がんと転移性(続発性)肝がんの2種類に大きく分けられます。原発性肝がんは、肝臓を構成する細胞ががん化してできたものですが、肝細胞から発生する肝細胞がんと胆管細胞から発生する肝内胆管がんに大別されます。原発性肝がんの中で肝細胞がんの占める割合は90%、肝内胆管がんは8%で、圧倒的に肝細胞がんが多くみられます。肝細胞がんの発生には、肝臓の慢性的な炎症や肝硬変が影響しているとされています。今まで肝細胞がんはB型やC型のウイルス性肝炎を背景として発生したものが多くみられていましたが、近年、肝炎ウイルスに対する有効な治療法が開発され、それとともにウイルス性肝炎からの肝細胞がんの発生頻度は少なくなってきています。一方で最近は脂肪肝や糖尿病などの代謝性疾患を背景とした肝細胞がんの発生が増加傾向に有ります。
転移性肝がんは他臓器のがんが、肝臓の中に転移して形成されたものです。特に多いのが胃、大腸、胆嚢、胆管、膵臓などの消化器系のがんや乳がん、肺がんからの転移です。肝臓はもともと血液浄化フィルターの機能を持っているため、原発巣から遊離したがん細胞が肝臓に膠着しやすい構造をしており、そのため肺や脳に比べて肝臓に転移が形成されやすくなっています。裏を返せば、肝臓にがんが転移した場合でも、がんの進行が全身に及んでいるのではなく、肝臓のみに限られている場合も少なからずみられます。
肝がんに対して行われる治療は肝切除、肝移植、ラジオ波またはマイクロ波による焼灼術、肝動脈塞栓化学療法、肝動注化学療法、薬物療法、放射線・粒子線治療などがあります。がんの種類とその進行度、背景肝の障害程度によって治療方針は異なり、また、いくつかの治療を併施する集学的治療も積極的に行われます。